従来、メンタルヘルスの領域は、主に社員の健康管理という観点から捉えられてきました。しかし、職業性ストレスが社会的な問題となる中で、ストレス・マネジメントは、ビジネスマンが習得するべき重要なスキルとして考えられるようになってきています。
世界でもトップクラスの会計事務所、プライスウォーターハウス・クーパーズが2000年に行った調査によれば、1999年に卒業した世界11カ国のMBAの実に約6割が、仕事と個人的な生活のバランスを保つことが最も重要なキャリア上のゴールであると答えています。
日本では仕事がすべての中心となる発想がまだ強いようです。しかし米国では仕事と私生活のバランスの均衡を図ることを、マネジメントの領域としてはっきりと意識しているのです。仕事以外のストレスはやはりアメリカでも家庭からくることが多いようです。全アメリカ人勤労者の三分の一は18才以下の子供の養育をしています。あるシンクタンクの試算によれば、彼らにチャイルドケアのプログラムを提供することで子供の病気やけがなどによる欠勤の40%が減少するとしています。また、およそ25%の働く親は、子供の事を勤務中に何度も思い出し、心配しているため仕事に影響が出ているとしています。また全勤労者の約9割が身近な法律や家計管理の情報やカウンセリングを必要としていますが、そのうちの約7割が経済上の理由でそのような相談に躊躇しているようです。
全米でもトップクラスのビジネススクールに位置づけられているケロッグスクールの卒業生に郵送された2003年夏のOB会報で面白い記事をみつけました。それは1995年の卒業生で、現在プロ野球メジャーリーグの要職にある黒人女性の発言です。彼女は、『「私生活」と「キャリアや仕事」とのバランスをとりつつ、CEO(最高経営責任者)になる為にはどのような要件があるだろうか』という質問に、財務知識や交渉術、起業家魂、メンター(自分が仕事でも価値観でも師と仰げる人物)を持つことと並んでストレス・マネジメントという単語をキーワードとして出しています。また別の会報誌にも仕事と生活のバランス(balancing
work
and
life)やストレス・マネジメントの重要性が主張されていました。今やワーク・ライフ・バランスはアメリカではバスワード(注目されている言葉やコンセプト)と言えるかもしれません。
そしてこのようなワーク・ライフ・バランスの議論が論文や著作、ハーバード・ビジネス・レビュー誌などの雑誌を通じて世界に翻訳され経営のキーワードとして広まっていくことになるでしょう。 |