○ 第8回 2006年12月
「トップ・マネジメントによるインナーへの対応A」
○ 第7回 2006年11月
「トップ・マネジメントによるインナーへの対応@」

○ 第6回 2006年10月
「企業経営におけるインナーとアウターの関係」

○ 第5回 2006年9月
「インナーのモチベーションと企業価値への影響」

○ 第4回 2006年8月
「企業と商品が保有する無形価値A」

○ 第3回 2006年7月
「企業と商品が保有する無形価値@」

○ 第2回 2006年6月
「商品とは?」

○ 第1回 2006年5月
「企業と経済社会」

○ 作者プロフィール
 
     第1回  “企業と経済社会”
土屋 博之 著      

1.はじめに〜著者のリスクに対する認識
私たちが生活している場所は、変化(不確実性)の世界である。私たちは、将来については、ほとんど知らずに生活しており、人生に問題(変化)が生じてくるのは、私たちが余りにも将来を知らないという事実から生じているといえる。これは、企業においても同様であり、問題の生じている状況は、基盤や価値の大きさに関係なく、一部の知識しか持ち合わせていないことによるものである。

リスクは、私たちの周囲のいたるところにあり、ある程度の理解は可能であるが、完全にその内容を知った時点で、リスクは消滅する。それは、変化がないところには、リスクは存在しないと、同じ意味である。しかし、変化のない生活の中では、毎日が退屈であり、生き甲斐のない生活になっていく。よって、私たちの生活の中にも、ある程度の変化は必要不可欠である。

これを企業社会で考えてみると、企業の経営目的は、最小の費用で最大の利潤をあげることである。ところが、現代企業は利潤の増大のみの経営目的の設定では生き残れない。それは、経営者の予測できない偶発的な損失の企業内外での発生により、企業が倒産に追い込まれるという事例が多数、発生していることから、企業経営には損失防止のためのリスクマネジメントを導入しなければ、企業経営が維持できないことを多くの経営者も認識してきた。

しかし、現在も官民を問わず接待、贈与、談合、違法取引、利益供与、損失補填、環境汚染等の問題ある行為が次々と摘発され、場合によっては企業の存続を危うくする事態に陥るケースもでてきている。また、これらのモラルハザードの崩壊は企業に対する不信感を助長すると同時に、社会から厳しい批判を受けているのも事実である。これに対して、危機意識を持っている企業は、こうした不祥事の続発を背景とした危機意識から、リスクマネジメントの早急な導入を念頭に置いた企業行動のありかたについて、導入あるいは導入の検討をしている。
このように、リスクマネジメントは企業が経営目的を達成するためには不可欠なものとなり、企業危険を管理するための科学的な手段として位置づけられるようになってきた。

これほどまでに高度に複雑化した社会のなかでは不確実性が高くなり、将来の予測と適切な行動を選択する能力(リスクマネジメント能力)が必要不可欠となる。その能力が必要となった背景には、リスクは避けてとおるものではなく、マネージすることが大切であり、社会の中には、個人・企業を問わず、何かを行うことへのリスクは必ず発生している。その変化が大きいと「何もしない」ということが、最大のリスクになる可能性を持ち合わせている。
このように、リスクとチャンスは表裏一体であり、正しい認識のもとに積極的にリスクをとることが企業経営の本当のおもしろさでもあると、著者は認識している。

2.企業の位置づけ
私たちは、職場、顧客、取引先、そして地域住民などと社会の一員として、地球的規模で経済社会という相互作用をもつ糸により、インターネットの『網の目』のように互いに結ばれている。そのなかで、私たちが企業をとおして、また社会のなかでどのような役割をもっているのか、そして、どのような行動が望ましいのかを、企業に労働力を提供している者として記述する。企業形態は、公企業、私企業、公私混同企業、組合企業の4つに大きく分けることができるが、この4つのなかでも、著者も含めて関係者がもっとも多いのは私企業である。

@消費者(兼)生産者
平日の朝、都心の駅は多くの人で混雑している。通勤ラッシュと呼ばれるとおり、電車の乗降客でいくつもの人混みが現れては消え、消えては現れている。しかし、朝のラッシュも11時頃になると、それも一部を除いて少なくなっている。その人々の多くは、企業に労働力を提供するために、いいかえれば企業から与えられた仕事をするために、職場に消えていったのである。

このように、私たちは、働く仲間と協働し、企業の仕事を担い、社会に必要な製品やサービスを提供している。そして、代償として、企業が上げた収益から賃金として還元されている。
その賃金は、生活に必要な衣食住や娯楽に使われる。そのことから、私たちは消費者と生産者を兼ねているといえる。

A企業の性質
企業は主として、5つの性質をもっている。
一つ目として、商品(製品とサービス)の生産および提供者であり、経済循環の一役を担っている。

二つ目として、運営は成果を中心としている。例として、メーカーとしての企業は資金を元に、工場を手に入れ、生産設備を整え、従業員を雇い生産を開始する。製品をつくるには、原材料などの経営資源 (生産要素)を手に入れ、そして製品を消費者に引き渡すための輸送も必要となる。これらの企業活動のすべてには費用がかかり、企業は費用を上回る利益を上げることで、経営は成り立っている。もし、利益がない状態が継続すると、投資した経営資源を浪費したことになり、企業としての存続さえ危うくなる。

三つ目として、合理原則を最大限に追求する組織体である。企業は、容易性、良質性、迅速性、経済性の4つで全体最適を追求している。

四つ目として、社会的責任を常に問われている組織体である。最近では、『企業の社会的責任(CSR)』という言葉も聞き慣れてきた。先に、一つ目の性質として、企業は商品の生産主体であるとしている。当然ながら、この前提として生産物は『社会に役立つ』という前提において成り立っている。この性質については、次回以降で記述するので、ここでは企業の目的は、営利追求だけではないということだけ述べておく。
最後の性質としては、常に危険負担を担っている組織体である。企業は商品を社会に提供することを目的として、計画的に活動しているが、その結果がいつも予測どおりにはならない。企業の運営はいつもリスクを持っており、発生した結果の処理責任は当然ながら企業が持つことになる。

企業の主な性質
1.商品(製品とサービス)の生産・提供者
2.成果中心の運営
3.合理原則の組織体
4.社会的責任を問われている
5.常にリスクを担っている

以上、基本的な企業の性質として5つを述べたが、このほかにも数多くの性質があることは、述べるまでもない。しかし、著者は第二回目以降を、以上の5つの性質に関連して述べていく予定であることから、この定義で話を進めていく。

次回は、第二回として企業が生産・提供している“商品の価値とは?”について述べる。

 
 
 


 
 
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