第一回において、企業は社会への商品(製品とサービス)の生産および提供者であり、経済循環の一役を担っている、と述べた。では、その商品とは何か、およびその商品の生産過程におけるインナーの関わり方について、製造業を中心として述べていく。
1.製造業の動向
@収益事業の変化
最近の企業を取り巻く事業環境は、目覚しい技術革新による社会のIT化の進展と、それにともなう地球社会のボーダレス化、世界共通の課題である地球環境保護の問題、加えて、それらの社会全体の大きな変化に対応可能なリスク・マネジメントの構築の必要性にさらされている。さらには、企業を取り巻く社会環境や経済環境および技術革新の進展から、企業競争において製品での差別化が非常に難しくなっている。
この激烈な企業競争を生き抜くために各企業は、新たな価値創造の方法として伝統的な人(ヒト)・物(モノ)・金(カネ)・情報(ジョウホウ)という4つの経営資源を生かしながら、次の経営資源を模索している。それは、各企業を取り巻く経営環境が異なっているなかで、いくつかの大企業はビジョン、ブランド、ナレッジなどに着目し、そして活用しながら、Customer
Benefitの拡大による事業の展開を拡大しようとしている。
製造業においては、自社製品を核とした事業モデルとしての顧客へのサービス事業の構築による収益拡大を志向している。この動きについて、セオドア・レビットは「顧客サービスこそ製品そのものの中心であることをはっきり認め、ハードウェアの製造と同様の心遣いを込めたら、その成果は想像を絶するほどになるだろう
」と論じている。そして、フィリップ・コトラーも著書の中で「物的製品が容易に差別化できない場合、競争に勝つ鍵は、評価されるサービスの付加とサービスの質の向上にあるだろう 」と述べている。
このように、企業が昨今の激変する企業競争に生き残るためには、広義の意味での顧客ニーズを満たすことにより満足の提供を継続し、見返りとしての利益の満足を得ることで、ゴーイング・コンサーンを実現していくことが重要となる。
また、「サービス」の言葉の意味は、人それぞれにおいて多くの意味を持っているが、著者は大きく捉えて、次の意味および表現のいずれかであると理解している。
a.
表現に見られる店員などの態度
例として、『ここの店員は愛想が良く、サービス満点』
b.
無料やおまけの意味
例として、『「飲み物はサービス」や「本日のサービス品」』
c.
精神や理念を表現
例として、『サービス精神に徹する』
d.
業務活動の意味
例として、『「アフター・サービス」や「メンテナンス・サービス」』
これら、4つの意味および表現のなかで、製造業が社会へ提供する商品のなかの『サービス』のほとんどは、【d】であるといえる。
A商品=有形財(製品)+サービス
製造業の従業員の多くもサービスの提供者であり、総務、法務、経理などの各スタッフやコンピュータのオペレータが、いわゆる「サービス工場」として、「製品工場」へサービスという商品を提供しているといえる。このサービスとは、一方が他方に対して提供する行為やパフォーマンスであり、本質的に無形でいかなる所有権をもたらさないものをいう。そして、サービスの生産には有形財がかかわる場合と、かかわらない場合がある。
この有形財とサービスの関係は、サービス・ミックスのカテゴリーとして企業の市場への提供物において、5つに分類
されている。
a.
有形財のみ:有形財にサービスが含まない(石鹸など)
b.
サービスを含む:有形財にサービスが含む(乗用車<修理、メンテナンスなど>)
c.
サービスと有形財の混合:有形財とサービスが半々(レストラン<食べ物、サービス>)
d.
若干のサービスや有形財が付随しているサービス:主体のサービスに、付随的サービスや支援有形財がともなう
(航空機での輸送サービス中の機内食など)
e.
サービスのみ:主体のサービスのみのもの(ベビーシッターなど)
このような、サービス・ミックスのカテゴリーの中で、製造業は主にサービスを含む有形財のカテゴリーによるサービスを拡大することで利益をあげてきている。
例として下記に、製造業が有形財からの派生サービスを事業展開している、または展開しようとしている表を掲載した。
主な製造業の派生サービス |
企業名 |
主な製品 |
派生サービス |
花王 |
家庭用品 |
衛生管理(外食産業・食品工場向け) |
ライオン |
家庭用 |
衛生管理(外食産業・食品工場向け) |
ダイキン工業 |
空調機 |
空調システムの保守管理 |
日揮 |
プラント |
設備管理・保全および機材調達 |
松下電工 |
住設機器
照明器具 |
リース事業(オフィス製品) |
ソニー |
電気機器 |
AV機器への外出先からの遠隔操作(録画予約など) |
キャノン |
PPC
プリンター
|
製品(消耗品)の保守管理およびネットワークサービス |
東芝 |
電気機器 |
ネット利用による白物家電への情報配信 |
ピジョン |
幼児用品 |
保育所運営およびベビーシッター派遣 |
※出所『日本経済新聞』2003年3月20日 |
このように、昨今の低成長・モノ余り経済を背景に、製造業においても「有形財+サービス」で稼ぐ流れが加速している。これは、今までの有形財の販売主体の収益構造を見直す動きが情報、自動車産業などから日用品などを含む製造業全般にまで拡がっている。
その流れのなかで、これからの製造業は、どのようにインナーに対してマネジメントをすることで商品である製品とサービスの価値、そして企業そのものの価値を拡大させていけるかが、これからの生き残りを賭けた競争を大きく左右する時代に入っているといっても過言ではない。
2.製品とサービスの融合
製造業が市場占有率(シェア)を向上させていくには、低コストと価格の維持も必要であるが、それと同時に顧客の多様化した個別ニーズの把握により、それに対応した製品の市場投入で顧客の満足を継続的に維持することが重要となる。
多くの製造業では、FMS
やモジュール生産方式 の導入および共有のプラットフォームの設計などによって目標を達成する取組みをおこなっているが、製品自体にしか着目していない企業が、いまだに散在している。この製品にサービスという要素を付随することによって、商品を差別化でき、コストや利益にプラスの影響を及ぼすことが可能となる。単にサービスと一言でいうが、現在では、問題の解決(技術・実務上)、製品の設置、教育(トレーニング)、メンテナンスなどの従来からのものや、情報システムなどの顧客支援にいたるまでの多岐に渡っている。
まだ、多くの製造業は、顧客の求めているサービスを個別に把握できていないため、製品に付随や付加するサービスとサービス自体に価値があり、オプショナル・サービス(別料金)として顧客に提供可能なサービスの区別が不明瞭となっている。さらには、提供しているコストの把握が不十分な場合や、サービス自体が大きなコスト負担で利益の損失を繰り返している場合もあるが、今後において製品とサービスを最適融合した商品にする戦略により、商品価値および企業価値の拡大が見込まれる。
今回は、『商品は製品とサービス』であることを述べた。次回は、その商品および企業の無形の価値について述べる。
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