○ 第8回 2006年12月
「トップ・マネジメントによるインナーへの対応A」
○ 第7回 2006年11月
「トップ・マネジメントによるインナーへの対応@」

○ 第6回 2006年10月
「企業経営におけるインナーとアウターの関係」

○ 第5回 2006年9月
「インナーのモチベーションと企業価値への影響」

○ 第4回 2006年8月
「企業と商品が保有する無形価値A」

○ 第3回 2006年7月
「企業と商品が保有する無形価値@」

○ 第2回 2006年6月
「商品とは?」

○ 第1回 2006年5月
「企業と経済社会」

○ 作者プロフィール
 
     第3回  “企業と商品が保有する無形価値@”
土屋 博之 著      

前回まで、企業は社会への商品(製品とサービス)の生産および提供者であり、経済循環の一役を担っており、その企業が社会に提供している商品には製品とサービスがあり、それぞれが独立または融合されて企業の商品となっていることを述べた。今回および次回は、企業および商品が保有している無形価値(見えない価値/インタンジブル)、そして無形価値を生み出すためのインナーとの関連性について述べる。

前回において、企業は伝統的な人(ヒト)・物(モノ)・金(カネ)・情報(ジョウホウ)という4つの経営資源を生かしながら、そしていくつかの大企業はビジョン、ブランド、ナレッジなどの無形の価値に着目し、活用していると述べた。そのなかでも、今回は消費者にとって最も親しみがあり、満足を得ることができる無形の価値としての“ブランド”を高めることによって企業価値向上の実現について述べていく。

1.顧客満足とブランド
@ブランドの形成要因
ブランドの定義は、アメリカ・マーケティング協会において「ある売り手、あるいは売り手の集団の製品およびサービスを識別し、競合相手の製品およびサービスと差別化することを意図した名称、言葉、サイン、シンボル、デザイン、あるいはその組み合わせ」としている。また、ブランドと商品名の違いは「ターゲットとする顧客が、イメージがすぐに湧き、他社との違いをすぐに、はっきりと表現できるのがブランドであり、それ以外が商品」としている。一般的なブランドの形成要因のなかで最重要視されているのは、自社の商品・サービスを購入する顧客であり、その顧客の視点から考えるブランドの意義として、ひとつは「最低限の品質の保証」である。たとえば、最低限の品質としての例としては、マクドナルドや吉野家などの価格は安いが粗悪品や腐りかけの品物を提供しない信用。

そして、もうひとつは、そのブランドを持つことでの満足の向上があり、その例として最高級としての高い満足の継続となるグッチ、ルイヴィトン、アルマーニなどがある。

このように一口にブランドといってもさまざまなレベルでのブランドがあり、近年においては、強いブランドの構築により、企業および商品の評価にも影響を及ぼしている。

A顧客満足と顧客ロイヤリティ
今までの企業競争は、ほとんどが製品の差別化のみであったが、現在では技術開発の平準化などにともなう低価格製品の市場導入により、製品のみによる価格対性能の差別化も難しくなっている。
また、顧客もとくに高額商品や耐久消費財においては、長期的に安心して使用できる点を重要視することにより支出を抑えている。このような企業を取り巻く環境変化の中で顧客ロイヤリティを獲得するためには、顧客満足を高めることが重要となっている。

この経営の原点ともいえる、顧客満足(Customer Satisfaction=CS)は、現在では多くの企業が重要性を認識し、顧客満足の向上こそが企業成長の重要課題としており、顧客満足の向上活動に取り組んでいる。その方法のひとつとして、顧客への綿密な顧客満足度調査の実施において、顧客ニーズに応える高品質の製品と関連サービスは高い顧客満足度を生み、相乗効果として高い顧客ロイヤルティの向上につながり、そして高い顧客ロイヤリティこそ長期的な財務実績を押し上げる最も重要な原動力となる。

Bロイヤルカストマー効果
顧客満足を得ることで、顧客はその企業の商品を継続的に購入および利用する。そのことは、企業が売上や利益を安定的に得ることになり、それは将来への成長の基盤となる。しかし、競争の激化によって、顧客満足レベルも従来のレベルより高いレベルでの満足(感動レベル)が必要となってくる。当然ながら、高い満足を得た顧客は当該企業の商品を購入および利用する頻度も高くなり、さらには顧客自身も知人や周囲に対して口コミなどによる宣伝活動を担うようなロイヤルカストマー(Loyal Customer)へと変貌する可能性が高くなる。それらのことから、ロイヤルカストマーから恩恵を受けるメリットとして、次の3点が考えられる。

a. 紹介受注の増大
顧客満足度の高い既存の顧客が、口コミなどにより知人や周囲の人に商品の良さを認識させることで、既存顧客以外からの受注が可能になる。それらの紹介受注の比率が高ければ、受注のための営業活動や広告活動も減少するメリットがある。

b. ロイヤルカストマーの増大
顧客は、満足度が高まることで継続的に同企業の製品やサービスを購入および利用してくれる忠実なロイヤルカストマーとなる。これは、企業にとって、継続的に安定した売上と利益を確保することができるメリットがある。
顧客満足度を向上させることで、顧客維持(既存顧客のつなぎとめ)をすることは、新規顧客を獲得するために要するコストに比べ著しく低いため、企業にとっては新規顧客を開拓するよりも顧客維持に力を入れたほうが、コストや労力が少ない状態で維持できる。

c. 商品のブランド価値を高める
高い顧客満足により、そのブランドに無形の価値が生じてくる。そのことにより、多少価格が高くても企業間競争に勝てるようになる。

ブランド価値の構築においては、デービット.A.アーカーが、「顧客との深いつながりの構築が重要であり、深い関係を持つことである」と述べている。これは、企業が高い顧客満足を維持することにより、顧客は機能的便益・情緒的便益・自己表現的便益が相対的に強くなり、当該企業に対しての無形の価値が上昇してくることである。
以上のように、企業にとって顧客満足度の実現と向上によるメリットを受容することが可能となる。

2.ブランドとキャッシュフロー

企業ブランドは企業の「見えない資産」である。しかし、これからの企業会計では、それを「見える化」する方向性が出てきている。このことから“ブランド”は、これまでの“無形資産”という考え方ではなく、“見えにくい資産”または“過去において見てこなかった資産”との表現が適切である。それは、ブランドを含めた、今まで企業にとって無形であった資産に対する測定方法が確立されてきていることにより、永遠に無形とはいえなくなっているからである。
現在では、ブランド価値を時価換算評価した数字は、市場で評価されている企業価値と貸借対照表上に表示されているPBR(株価純資産倍率)や時価総額と相関があることが判明している。このPBRは、企業の簿価との乖離を表している潜在的価値評価である。そのことから、PBR が高倍率である企業は、帳簿上の有形資産では評価できない潜在的価値を市場から認められている。その潜在的価値の中で、ブランドの価値は大きいと考えられる。

企業を取り巻く環境は、社会のIT 化などで日々激変しており、企業経営は一段と難しさを増している。その企業経営のなかで重要な企業の資産とは、将来的にも企業にキャッシュをもたらす潜在性を有する資源である。このことは、特に今後の経営においては“ブランド”および顧客資産などの、今まで無形の資産といわれていたものが企業資産の大きな部分を占めることになる。著者は今後の企業経営において、このような資産価値が、単純な技術開発への投資によって得る価値よりも、大きな利益やキャッシュフローを生み出す可能性が高いと確信している。

その理由としては、価値あるブランドは新規事業への参入コストの引き下げの要因となり、また、ビジョン、ナレッジ、ビジネスモデルなどの価値ある無形資産を活用して、短期でのキャッシュの生み出しによるキャッシュフローの改善において、多大な効果が期待できると考えられるからである。

次回は、今回に引き続き、ブランド価値におけるインナーとの関連性について述べる。

 
 
 


 
 
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