前回に引き続き、今回もブランド価値におけるインナーとの関連性について述べていく。
前回は、無形の価値としての“ブランド”を高めることで企業価値が向上していく理由として、価値あるブランドは新規事業への参入コストの引き下げ要因となり、キャッシュフローの改善においても、多大な効果が期待できることを述べた。
そこで今回は、ブランドを創り出している要素から、インナーとブランドの関連性を考察していく。
1.ブランドの購買要因と商品価値
@購買要因
消費者のブランドの効用の主な項目としては、A.どんな利便性があるのか理解しやすい、B.安心して利用できる、C.保有することでの自己満足や優越感を得やすい、などが考えられる。そのなかでも、価値の高いブランドは、下図の価値を強く保有している。

また、消費者はブランドに対して、個性や性格などの意識を持っており、それは次のような、ブランド・パーソナリティを付加することで単なるモノではなくなっている。
・内向(外向)性:冒険的・社交的・安定的・慎重な
・好感度:人当たりが良い・落ち着いた
・意識性(程度):責任感・自立・自律
・感情:落ち着き・興奮
・文化性:洗練・知性的
このように、品質が同じ商品でも認知度を高め親近感を与えることで、買い手は自分に合ったブランドを、価格対品質性能よりも、より高価格で購入する。
A商品価値
これらのブランドを構築から維持・向上させるには、製品が持っている有形価値以外に無形の価値としての過去から築き上げた信頼性、企業あるいは製品の歴史、販売網、パッケージ方法やデザイン、消費者に与えるイメージ、製品のデザインやプロモーションなどの、さまざまなマーケティング・ミックスを用いることが必要となる。そのためには、商品を売るためだけの宣伝ではなく、ブランド資産価値のレベルを保持・高めるための投資が企業には必要となる。このことから、最適なブランディングをしていくためには、商品価値を構成する要素としてもブランドの効用を理解し、活用させることでブランド以外の価値と連携させ最大限の商品価値を創造することが重要となる。そのためにもインナーのモチベーションの向上による意識改革が不可決である。
商品価値に含まれる主な価値構成を図で表すと下のようになり、この図のブランド価値を構成しているほとんどの要因に、インナーが深く関わっていることが理解できる。

このように、商品価値を維持および創りだすためにはインナーの協力が不可欠であり、その能力を最大限に活用してもらうためには、モチベーションの向上と維持が必要である。
2.インターナル・ブランディング・リスク
一般的に、ほとんどの企業は、どのようにすれば多くの人にもっと商品を買ってもらえるのかを考えている。しかし、ほとんど忘れられているのは、自社の従業員である“インナー”という大切かつ重要な市場が存在しているという点である。現実に、ブランドを浸透させ、消費者に価値を提供しているのは従業員であることから、社内マーケティングの重要性においては、商品と従業員の感情を一体化させることにより価値が増加していく。
もし商品に対して、従業員の思い入れがなかったとすれば、ブランド価値構成要因にも悪影響を及ぼし、広告などで消費者に伝えようとするメッセージにも十分な効果を発揮できなくなり、場合によっては顧客へのメッセージを従業員が理解していないことで、期待とは反対の行動をしてしまうこともある。また、ブランドの価値を信じていないとか、会社から疎外されていると感じたりすることで、逆に勤務している組織に対して敵意を持ったりすることも考えられる。しかし、従業員がブランドに関心を示し、その価値を信じることにより、さらに懸命に働くことでロイヤルティも高まる。そして、全従業員の仕事の目的とアイデンティティを共有することで気持ちが調和し、業務効率も向上していく。
昨今では、従業員に企業戦略や、その方向性についての重要性を明らかにする経営者は、増えてきているが、ブランドを社内で拡大する必要性を理解している経営者は少ない。それは、従業員は自社ブランドについては、知っていると思い込んでいるからである。さらに、社内コミュニケーションを担当する人事部門などのスタッフがマーケティング・スキルを習得していないことで、社内コミュニケーションにおいても円滑に行われていないことが大きな課題要因となっている。
消費者への広告の原則を社内コミュニケーションに応用することは、ブランドについて従業員の理解を深めるだけでなく、ブランドに対しての思い入れも増加させることができる。また、これを応用することで、従業員に日常業務のなかでもブランドのビジョンを実践させることが可能になり、消費者に対する企業のメッセージと従業員の行動が一体化し、矛盾していないことを理解させることで、企業文化の統制による社会へのアピールにより、ブランド価値を高めることが可能となる。
次回は、具体的に社内マーケティングを行う時の経営陣の従業員への対応方法について述べる。 |