第1回 今求められているのは実践的な消費者志向経営
(1)社会的背景
○企業は、消費者の信頼や期待に応えた経営が求められている
今年7月に明らかになった“一酸化炭素中毒事故を起こしたガス湯沸かし器”の事例では、最初の事故は1985年であり、20年以上にわたって死者が相次いでいながら、消費者には注意喚起がなされておらず、有効な事故対策が取られていないなど大きな社会問題になっている。
昨今、このような消費者の権利・利益に反する不祥事が頻繁に発生し、消費者の企業への信頼喪失が企業の存続にまで影響を及ぼす例も見られ、消費者との信頼構築が急務となっている。また、最近、社会の持続可能性の視点から、企業の社会的責任(CSR)が要請されており、重要なステークホルダーである消費者の期待や要請に応えることもまた企業には求められている。
(2)どのような解決がふさわしいか
○企業への過度の規制や行政介入は望ましくない
企業の消費者利益に反する行動について、消費者の基本的な安全にかかわるものなど法的規制や行政の介入が必要な例もあるが、過度な法的規制や行政の介入は市場における企業の活動に多くの障害をもたらすことにもなりかねないばかりか、消費者の自立にとっても、企業と消費者との信頼関係構築にとっても好ましいことではない。
○企業が自主的に消費者志向経営に取り組むことが必要
現在の社会的背景をふまえて、企業が消費者との関係で取り組むべきは、消費者志向経営の実践であり、しかも自主的な消費者志向経営への取り組みである。
なお、企業の自主的な取組みは消費者が評価することによって市場原理を働かせることが重要であり、COMSの仕組みでは評価の仕組みもまた用意されているが、詳細は次回以降に譲る。
(3)企業の消費者志向経営の現状
○経営理念や経営方針で掲げる「お客様第一」で消費者志向経営は実現できるのか
今や大企業も中小企業も、業種を問わず、経営理念や経営方針で「お客様第一」や「顧客満足」を掲げているが、多くはそこで留まり、さまざまな企業活動の場面で顧客満足を経営の仕組みとしている例はあまり見られない。ガス湯沸かし器の例のような「商品の安全性」に関していえば、「顧客満足」を商品の安全を実践していく仕組みにすることこそが求められるのである。
○より具体的に実践的な消費者志向経営が求められている
インターネットの普及による情報化の進展、グローバル化、ビジネスにおける公正さ・透明性への要請や企業の社会的責任(CSR)の高まり、さらには、消費者の権利を規定した消費者基本法が2004年に成立し、消費者の行動が企業活動に大きな影響力を及ぼし始めてきている。
企業をめぐる環境の変化は企業における存続の条件を変わるということでもある。企業は消費者との関係において、より具体的で実践的な消費者志向経営が求められている。
(4)消費者志向マネジメントシステムNACS基準(COMS ※コムスと略称)とは
○消費者問題の専門家集団が消費者志向経営推進のためのツールを作成
(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACSと略称)では、企業が消費者の評価を得て市場における競争力強化へ、さらには企業の継続的発展につなげていくために、企業が自主的に消費者の権利や利益を尊重し、消費者のニーズや期待に応えた消費者志向経営を推進するために、規格として「消費者志向マネジメントシステムNACS基準」の作成、さらにはこの規格を企業の消費者志向度を評価するためのツールとした「消費者志向度評価チェックリスト」(COMSチェックリストと略称)を作成した。
なお、COMSは2003年から2004年にかけて、経済産業省からの受託事業として作成されたものである。
○COMSの核は6つの原則を定めた「消費者志向経営方針」
@法令遵守・社会倫理を尊重する
A消費者の権利・利益を尊重する
B消費者のニーズの把握による消費者の満足を図る
C広く消費者へ情報公開する
D広く消費者とコミュニケーションする
E消費者とともに環境保全に取組む
○COMSで求められる消費者志向経営の範囲は9つの分野
a)コンプライアンス
b)個人情報保護
c)商品・サービスの品質安全
d)消費者との取引・契約
e)広告・表示等
f)消費者相談
g)アフターサービス
h)環境保全
i)緊急事態対応 |