○ 第10回 2007年5月
「CSRの実践としての消費者志向促進へ」


○ 第9回 2007年4月
「企業のホームページをCOMSの視点で検証(2)」


○ 第8回 2007年3月
「企業のホームページをCOMSの視点で検証(1)」


○ 第7回 2007年2月
「消費者志向経営における消費者とのコミュニケーション」


○ 第6回 2007年1月
「消費者志向を反映した緊急事態の取り組み」
○ 第5回 2006年12月
「消費者志向経営における自主基準の役割」
○ 第4回 2006年11月
「消費者志向経営を公開情報で検証しました(2)」

○ 第3回 2006年10月
「消費者志向経営を公開情報で検証しました(1)」

○ 第2回 2006年9月
「消費者志向経営の勧め」

○ 第1回 2006年8月
「今求められているのは実践的な消費者志向経営」

○ 作者プロフィール
 
※COMSとは、消費者志向マネジメントシステムNACS基準 (Consumer-oriented Management System NACS Standard)の略称で、企業などの組織が、消費者の権利・利益を尊重し、消費者のニーズや期待に応えた消費者志向経営を実施・推進していくことによって、その社会的責任を果たすための要件を指針として定めたものである。

第10回 CSRの実践としての消費者志向促進へ

7月に第1回目を寄稿してから、今回でちょうど10回目である。相変わらず企業の消費者志向が問われる事件が続いている。期限切れ材料使用、生保・損保の不払い問題、テレビ放送におけるデータねつ造事件、電力会社事故隠しなど、ここ数カ月だけでも次から次に起きる消費者利益を顧みない企業姿勢に消費者の企業不信は高まるばかりである。
一方で、多くの企業はCSR(企業の社会的責任)への熱心な取り組みが行われている。
このように企業の取り組みには一見矛盾している現状がある。そこで今回は、CSR(企業の社会的責任)と企業の消費者志向との関係について考察することとし、消費者志向マネジメントシステムについての最後の寄稿とする。


1.CSR(企業の社会的責任)とは
CSRについては、世界あるいは日本でさまざまな訳が試みられており、いまだ確定された定義はないが、本質は社会の持続可能性に対して、企業が本業を通して果たす責任ということを理解することが重要である。単なるコンプライアンスでもなく、不祥事対策でもない。また日本で60年代以降に問われている社会的責任とも異なっていることに注意が必要である。CSRの本質は、現在企業が社会の中で大きな役割を果たしていることから、未来に持続可能な社会を残すことに対して、企業が果たすべき責任を本業との関係で問われているのである。社会の持続可能性こそがキーワードである。
またCSRについては企業を取り巻くステークホルダーとの関係を考えなければならない。ステークホルダーは企業を取り巻く社会の構成員であり、その要請に応えることが持続可能な社会を築くことになるのである。ただ、消費者志向との関係を考えるにあたって、以下、消費者に焦点を絞ってその責任を考える。

2.持続可能な社会と消費者
消費者にとって持続可能な社会とはどのような社会であろうか、そこで企業はどのような責任が求められているのだろうか。たとえば、消費者がさまざまな利便を求めて購入した商品によって消費者の安全がおびやかされる社会を想定してみよう。あるいは事業者と消費者との契約が不公正であり、消費者が損害を受ける社会を想定してみよう。
いずれも消費者にとって持続可能な社会とは到底言えないことは明らかだろう。企業は消費者の安全を確保して利益をあげる、あるいは公正な取引による利益をあげることが当然要請され、それは持続可能な社会の条件でもある。
上記のことを企業側から見てみよう。消費者の安全がおびやかされ、消費者が不公平な取引から損害を受けた場合、企業は一時的には利益をあげたとしても長期的には、あるいは問題が明らかになった際に、消費者はその企業に非難の目を向けるだろう。日本では過激な不買運動に発展しないが、消費者の企業不信は、企業の業績不振につながることは多くの企業不祥事の事例が語っている。

ここで企業がCSRの実践をするにあたって、根本的な企業と消費者の構造的な関係を考えてみることが必要である。そのことによって企業が果たすべき責任も見えてくるからである。企業と消費者との構造的な関係として、情報格差や交渉力格差といわれる現状がある。消費者は企業の商品やサービスを使うことはできてもデメリットも含めた詳細な情報をもっておらず、その情報格差が商品・サービスの適切な選択を誤り、あるいは注意を怠り、思わぬ被害を受けることもつながりかねない。また消費者は組織力をもつ企業と比べたら、交渉力は格段に落ちる。被害を受けてもその被害を回復するために企業と対等に交渉し、自分の身に起きた問題についても適切な解決をすることは容易ではない。もちろんインターネット社会であり、情報も力もインターネットの持つ力で企業を脅かす消費者も存在するが、それはごく一握りだ。

多くの消費者にとっての現実は、企業との情報格差や交渉力格差によって、構造的に消費者が不利益を受ける現状がある。消費者にとっては持続可能な社会とするためには企業が消費者教育を行うことが求められている所以がここにある。これもCSRとして企業が可能な取り組みである。消費者も自立や組織力を高めるなど消費者自身の努力も必要であるが、社会や技術力の変化のスピードからすると自ずと限界があることから企業の消費者教育への取り組みは今後の企業のCSRの大きな取り組みとなるに違いない。
これらの内容は、まさにCOMSという消費者志向マネジメントシステムによって達成しようとしている消費者志向そのものである。
詳しい内容はこれまでの第1回から第9回の寄稿を参考にしてほしい。

【CSRの取り組み】

3.消費者志向マネジメントシステムの導入によるCSRの実践を
現在、CSRについては理念の導入の段階を過ぎ、実践の段階にきているといわれている。しかし、企業は消費者との関係での実践にあたっては、その方向性も戦略も、さらには具体的内容も、いまだ十分には固まっていないように思われる。多くはお客様のニーズや満足という取り組みで終わっているようだ。もちろんそれ自体は歓迎すべきことではあるが、CSRの本質、あるいは企業と消費者との関係を原点から見つめ、持続可能な社会の実現に対して、自社はどのような責任を果たしていくのかを検討することが必要だと思われる。

消費者との関係でCSRをどのように実践していくかについては、現在どこにもその標準となるものは存在しない。そこでCOMSを導入することによって、消費者に対するCSRの実践に活用することを勧めたい。前述したように、COMSの消費者志向経営の内容はまさに消費者との関係でCSRの実践となるものだからである。
今一度、COMSの核を確認してみよう。COMSでは6つの原則を定めた「消費者志向経営方針」を定めている。
@ 法令遵守・社会倫理を尊重する
A 消費者の権利・利益を尊重する
B 消費者のニーズの把握による消費者の満足を図る
C 広く消費者へ情報公開する
D 広く消費者とコミュニケーションする
E 消費者とともに環境保全に取組む

このような原則のもとに策定されたCOMSによって、企業がCSRを消費者との関係で実践し、健全な消費社会、つまり、未来の持続可能な社会を消費者とともに築いていくことが企業の発展のためにも求められていると考える。


○COMSについてのお問合せ
(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会  COMS特別委員長 古谷由紀子
NACS:http://www.nacs.or.jp/、COMS特別委員会http://www.nacs.or.jp/coms/index.html
目黒区中根2-13-18第百生命都立大学駅前ビル
TEL:03-3718-4678 FAX:03-3718-4015  E-Mail:coms@home.nifty.jp
 
 


 
 
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