○ 第3回 2008年6月
「訴訟における証拠としての電子メール〜まとめ」

○ 第2回 2008年5月
「会社における電子メール管理」

○ 第1回 2008年4月
「電子メール利用のメリットとリスク」

○ 作者プロフィール
 
 
フランテック法律事務所 弁護士 金井 高志 著   
シニアリスクコンサルタント 毎熊 典子 著   

第2回 会社における電子メール管理

電子メールをビジネスに利用することには様々なリスクを伴うが、だからといって利用しないとすることは非現実的である。そこで、会社としては電子メールを利用するメリットとリスクについて分析・評価を行い、その分析・評価に基づきリスクをコントロールする管理体制を構築したうえで、電子メールを利用することが求められる。

電子メール管理の具体的内容としては、規程等の作成、社員等の教育、およびモニタリングシステムやセキュリティーシステムの構築などが挙げられるが、かかる管理体制を整えるにあたっては、コンプライアンスやレコードマネジメントなどの各観点からの検討が必要とされる。


1.電子メールのコンプライアンス管理
現代社会は、これまでになく厳しく公正さが求められる社会であるといわれている。法規制の事後規制化が進み、会社法や金融商品取引法などに基づく内部統制が求められ、経営者の責任が増大する中、会社には法令等を遵守し、ステークホルダーの要望に応えるコンプライアンス経営が強く求められるところ、電子メールにかかわる法律やガイドラインは少なくない。
前述したように、電子メールで広告・宣伝を行う場合には、特商法などの適用を受けるし、電子メールを利用した取引には、電子消費者契約法や電子署名法などの法律や電子商取引等に関する各種ガイドラインがかかわる。また、情報の保護については個人情報保護法などによる規制を受けることになる。さらに、会社が保有する情報について法令等に基づいた提出命令が出されることもある。
電子メールのコンプライアンス管理を行うためには、会社がこれらの関連法令等について理解したうえで、電子メールの作成から送受信、保管等の一連の業務の中で、社員等がこれらの関連法令等を遵守できるように規程やマニュアルを作成することが必要となる。

2.電子メール管理とレコードマネジメント
電子メール管理は自社のレコードマネジメントに関する方針に則って行われることが必要とされる。一般的に、電子メールについては文書としての認識が薄いように思われるが、訴訟において電子メール(デジタルデータ)は準文書として証拠としての効力を有するものであることから、必然的に他の紙媒体の文書と同等の管理が求められる。

レコードマネジメントにおいては、文書等の入手・作成→配布・流通→活用→保管・保存→廃棄のプロセスを統括した管理が求められるが、電子メール管理にあたっても電子メールの受信・作成→送受信→活用→保管・保存→消去というプロセスに則して管理することが必要となる。
特に、文書やデジタルデータの保存は、従前、法令等の遵守、訴訟時における証拠としての活用、業務の効率化などを主たる目的として行われてきたが、近時においては内部統制の観点からも重要な意味をもつようになっている。
会社には業務を適正に行い、不祥事等を発生させないための体制の構築が求められているが、文書やデジタルデータなどの記録が保存されていれば、業務の実態調査のための資料として、あるいは業務が規程どおりのプロセスで進められていることや遵守しなければならない法律を遵守していることを示す証拠として活用できる。
万一、不祥事等が発生した場合でも、迅速かつ正確に原因を究明することが可能となる。そして、業務についての記録が残されており、いつでも調査が可能であるということが周知されれば、内部不正への強い抑止力にもなる。

 

3.電子メールにかかわる規程等の作成
電子メールにかかわる規程等は自社のレコードマネジメントに関する方針に則り作成されること、および電子メール管理にかかわる自社のポリシーを明確にするものであることが必要である。
私用メールや社外のメーリングリストへの参加等について、どの程度の制約を設けるかは会社の方針によるが、電子メールを調査することには社員等のプライバシーの問題が絡むため、電子メールの使用状況の常時モニタリングや企業秩序違反が発覚した場合のモニタリング、使用履歴調査の実施などについては、予め規程等により明確にしておくことがよいと考えられる。
また、違反に対する処分や昇給・賞与査定への影響などについても事前に明確にしておくべきであろう。こうした内容を含む規程等を設けておくことにより、社内の不正行為に対する抑止力としての効果も期待できる。

4.教育の必要性
会社では、入社すると同時に当然のようにパソコンとメールアドレスが与えられ、各社員は電子メールのビジネスにおける利用について何ら教育を受けることもなく、自己流で使用していることが多いのではないかと思われるが、このような態様は電子メールの利用に伴うリスクを増大させる。
会社としては、社員等に対して電子メールをビジネスで利用させる前に、まず、自社における電子メール利用に関わるポリシーを明確に伝えるべきである。そして、規程等の内容について周知させ、電子メールが様々な法令によって規制を受けていることを理解させたうえで、電子メールを利用するためのスキルが一定レベルに達していることを確認した後、電子メールの利用を許可するなどの措置を講じるべきである。

こうした教育によって相当数のトラブルを減らすことができるものと考えられる。また、教育を実施して規程違反の処分内容等を理解してもらうことは、電子メールを利用した社内不正に対する大きな抑止力ともなる。


★今後の予定
第3回「訴訟における証拠としての電子メール」(まとめ)
(1)訴訟における証拠としての活用
(2)電子メールの保存に伴うリスク
(3)まとめ

以上毎月1回 残り1回お届けします

 
 
 


 
 
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